先見力

 


海軍航空隊を育てた先見力 「山本五十六」

太平洋戦争開戦時、世界を震撼させた零戦、向かうところ敵なしの背景には、
高度な技術と訓練された優秀なパイロットの存在があった。

資金力に物をいわせて軍備を増強していくアメリカに対して、長期戦になれば勝ち目はなかった。
指導者たちは、先見力がなかったのである。、、、、、、、
そして、ミッドウェー海戦で優秀なパイロットや貴重な航空機を失い、敗戦へと歩んでゆくのであった

山本五十六は情報の少ない当時に於いて、すでに世界を見通す 広い視野をもって「現実」
を直視していた。
彼は折に触れ優秀な幕僚達を 「君たちは皆同じ答えしかできないのか?」と冷やかした

兵学校、術科学校、大学校と同じことを教わり、思想統一された 彼らに違った答えを求めても
無駄だったのである。山本は 特に意見の無い者を嫌った。

現代の会社の会議に於いても、日和見的発言や意見の無い者が 多いが、
詰め込み教育を受けた学卒者ほどその傾向が強く、 年寄り程「事なかれ主義」を通す者が多い。
後者は特に即刻退出を願うべきであろう。
また、山本は若い士官にブリッジ等の博打を勧めた。 主体性を持たせ、金を賭けて勝負
をすることで先を読む事を 教えたと考えられる。

さて、第一次世界大戦後、日本海軍の軍艦は石炭から重油へと 燃料変革の過渡期であった。
山本は日本で産出しない石油事情の調査の為、アメリカに視察を している。
新時代の燃料に注意を払ったのは自然の行為であったと言える。

帰国すると海軍大学教官となり、軍政学のなかで 「石油なくして海軍なし」
「航空軍備に対し強化すべき」 と説いている。
しかし、軍部から「物質主義に頼っている」と批判されたのも事実である。
精神論を物語るのはいかにも勇ましく見える。
会社にもいないだろうか、背景なくして精神論をかっこよく唱え 「やるしかない!」とか言う
上司は、竹槍で機関銃に突撃させるのと同じである。

第一次世界大戦の勝利に溺れた軍令部は伝統的兵術思想の 「戦艦を主とした艦隊決戦」と言う方針を崩さず
戦艦の強化を行った。
飛行機、石油と言う山本を異端者扱いした。
欧米出張で航空機の重要性をさらに認識した彼は 元帥副官等の推挙を断り、霞ヶ浦航空隊教頭兼副官 の
ポストに就いて搭乗員の強化を図っている。
その後、アメリカ大使館付武官を経て赤城艦長、航空本部長 連合艦隊司令長官と軍政系統の
ポストを渡り歩いている。軍令系統のポストは無い。
軍令部とはいわゆる後の大本営であり、戦艦主兵の艦隊決戦思想 の発祥地である。
軍令系統の人たちは高速戦艦をどう使うか、敵戦艦に対してどのように 飛行機を使うか等、
自国の過去の範疇で国力、生産力、技術力を考える事に集中して いた為、
世界的な視野で政治的、経済的に物事を考えられない欠点があった。
一方軍政系統の人たちは、世界的の軍縮の中で軍備、予算を考えなければならない為、
必然的に広い視野を持つことができたのも当然である。
陸軍が熱狂的に押し進めた「日独伊3国同盟」に対し 海軍は独伊と同盟を結べば米英との関係が悪化してしまう。
日本は原料を米英から仕入れて いるため、国力、生産力、原料の劣る日本が負けると提言していた。
結果論であるが、情報さえあれば、同盟してはならない事は容易に推測できることなのである。

しかし、独伊の勢いと短期決戦における東南アジアの油田確保と言う 一時的な打開策
に踊らされ、アメリカの生産力、資源の過小評価によって 日本は太平洋戦争へと突入することになるのである。



先見力とは!

先見力とは、繊細な観察眼に基づいた予測と行動を伴う意志決定、決断を 含む統合的な活動と言える。
ビジネス的に差がでるのは先見力のある行動蓄積をしているか、 追随的で常識的な対応をしているかで決まる。
さて、 先見力のある行動を身に付けるには

      1)未来に対して強い目標意識と現実的な理想像を持つ
      2)質の高い独自の情報源や情報網を持つ
      3)言語、ペーパー以外の観察力を持つ
      4)集めた情報を凝縮させる、一人で考えごとをしている
      5)情報凝縮を通じて未来への実現可能な事を見極めていく
      6)可能性を見つけた後は、行動である。

しかし、上記内容には、下記の背景の深さが要求されるのも事実である
視野の大きさである。物、人、の全体を観察する目、 事業全体、市場全体、商品全容を把握できること。
歴史を読める事も重要である。
歴史は繰り返すと言われ、歴史とその人物 を読めなくては未来も読めない。
人間観察も必要である。
消費者、生活についての変化が読めないようでは 現在の多様化したニーズを読むことは不可能であろう。

理想と現実的な目標
マーケットリサーチで目標もなく調査しても何も見えない。
調査には仮説が必要なように、将来を見通すには目標意識が必要である。
家電製品を世の中に普及させると言う目標を立てた松下幸之助 理想が現実を着実に飛躍させている。

情報網の整備
雑誌や新聞、インターネット、情報は現在の世の中で氾濫している
これらを整理すれば先見性が生まれるわけではない。情報量ではなく情報の質である。
書かれた情報は後追い情報であり、将来何をすれば良いか書いてある わけではない
のである。観察力 非言語情報が重要なのである
優れた経営者は現場を重視しているのは、記載情報を見るだけではないことを物語っている、

歴史を読むこと
先見性の豊かな人は臨んで歴史に問いかけている。
自分に当てはめ比較観察している。つまり、 時間の経緯の中に未来を求めている

情報の凝縮
世の中に情報は氾濫している。これらを自分の経験に照らし 統合化して身につけて
初めて決断、結論が生まれる。 一人になったり、缶詰状態になることは情報を整理する
ことよりも 情報を遮断することと考えた方が良い。
こうして、ひらめきや未来が見えてくるのである。

予知
「銀行貸し渋り」と言う問題でパチンコ好きの八百屋の親父が自分に 降りかかる問題を
どれだけ予測できるだろうか?
経営の不安定なパチンコ店に銀行が資金を貸さなくなり、 新台を入れ替えられず、
また、出玉を抑えてしまう。 巨視的な視野を持っていないと、小さな情報や一見関係ない出来事が
何を意味するか読みとることはできない。

決断
予知をしても行動が伴わなければ単なる知識である。 結果論は誰でも言えるのである。
大学卒の優秀な新入社員10人いれば物になるのは2〜3人と 言われるが、知識に行動が
伴わなければ意味を為さない。

正確な先見力を保つには、、、
状況に応じてフィードバックすること。つまり、周囲の変化に 敏感に対応すること。
物事には兆候が必ずあると言うこと。
バブルの崩壊に敏感に反応し対応できた会社は損失を 少なくしている。
そして最後に予測管理をすることである。
2〜3年の未来をあらゆるパターンで予測し対応できるか? それが出来たとき結果論と
して「先見性がある」と言われる のである。
    
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残念な事は、上記の知識を持つ若者が、「コンプライアンス」と言う言葉で、
芽が摘まれていることかもしれない。