戦略力 |
織田信長の戦略力 織田信長は桶狭間、長篠の戦い、毛利水軍等、ユニークな発想で勝利したが、 背景には組織化に関する戦略思考が存在した。 16世紀末の日本の鉄砲生産は世界一と言われ、信長軍は最高の装備率を誇っていた。 また、建造された戦艦は7隻で日本最強と言われた毛利水軍500隻を撃破している。 これは、最新技術の重視と言う発想に起因する。これを可能にしたのは、生来の好奇心、合理主義、情報に敏感と言う特性を持っていたからに他ならない。 如何に情報の価値を重視していたかは、桶狭間の合戦による論功行賞で、何をしていたか 解らない男を1位の手柄とし、敵将の首を上げた男が2番手になっている。 しかし、重要なことは、情報を集め、鉄砲を多量に買い、奇襲や奇抜な発想の転換を したからと言うことではない。これらの技術、情報を組織化(システム化)したことが 重要なのである。 信長の発想は、孫子と似ている。孫子は勝つ条件が出来るまで待て、そして勝てる所に 集中せよ、危なくなれば逃げよ、、、近い敵を作り、遠い味方をつくれ、、 部下に真意をしらせるな、意表をつけ、、 長篠の戦いで、信長が鉄砲3000挺を集中的に使用して武田の騎馬隊を壊滅させた時、 毛利元成は「鉄砲等があり、世の中には思いがけないことが起こるから、油断しては ならない」と言っている程度の認識の時代に、組織的に使用しているのである。 最近NHKで鉄砲3000挺の3交代一斉射撃はなかったのではないか?との話題も あったが、歴史書では一斉でなくても、柵木を持たせて防馬柵を作らせ、その合間から 交代で射撃したのは事実らしい。 従来の鉄砲の使用方法が、敵を引き付けて射撃して、ひるんだ隙に騎馬隊 がなだれ込むと言う方法、(これすらも当時では最新の戦法だった) これに対応して進撃した武田軍も馬鹿ではなかったが、武田軍には予期できない 行動が起きたのである。 水軍戦では、石山本願寺に海路兵糧を届けようと進軍してきた、毛利水軍800隻 に対し、織田水軍200隻は無残に敗北した。 ここで、水軍の増強の為、人員、船数と訓練をする従来の発想戦略を無視して、 2年かけ、7隻の軍艦を建造する。従来の戦法をことごとく無力化する手段と攻撃手段を 兼ねた軍艦であった。攻撃用大砲と火矢、鉄砲防御鉄板である。 毛利水軍600隻のバラバラの攻撃は、たった7隻だが集中組織化された軍艦には 歯がたたなかったのである。 信長の画期的発想と組織化は兵農分離と方面軍組織に見られる。 当時でも、農民武士に混じり、足軽と言われる雇われ農民兵を如何に効果的に使うか と言う課題に対し、武田信玄等も組織化はしていたのである。 その域を出なかったに過ぎない。秀吉のような人材を登用できたのもそこに背景がある。 領主、地侍から領地を取り上げ、武士集団を作り、知行制にて給付した。 年貢を取る立場と年貢を収める立場を明確にするための検知も行ったのである。 豊臣秀吉時代の検知、刀狩りの基礎である。 これで、武士集団は常備軍隊として長期遠征が可能になったのである。 この長期遠征が可能になった事は、戦略の根本から覆されることになる。 従来の篭城戦を含む、戦略構想は、農繁期等の季節を考慮して構築されている。 よって、篭城戦に於いてはそれだけでは全く価値の無い戦いになってしまうのである。 世の中の動向(技術、情報、社会、環境)の変化に対応した戦略構想がなければ、敗北 してしまうのである。 |
戦略とは!製品市場戦略 価格からコストを引き、市場規模とマーケットシェアを掛けたものを「収益方程式」と言う。つまり、収益を上げようとすれば価格を上げるか、コストを下げるか、シェアを上げるかと言うことになる。 しかし、単純に上記内容を実践している企業は、戦略性に欠ける。 自社、顧客、競争相手の要素を考慮してこそ戦略が成り立つのである。 差別化の無い製品は同じ土俵で戦うため、単純な価格競争で収益を乱し共倒れとなる。 製品を差別化するか、市場を差別化するか、顧客を差別化するか、、、、 また、商品のライフサイクルや事業の成熟度によっても差別化方法が異なる。 すなわち、何処で、どのように戦うかが戦略構想となる。 顧客に基づいた戦略立案 主要顧客に対して、自社の機能、競争相手の機能を含めて市場のセグメントが完成する。 (顧客の要求や自社や競争相手の販売圏、方法が決定する) しかし、その収益セグメントは社会環境変化や競争相手の変化に伴い陳腐化してしまう。 よって、再セグメンテーションで新しい顧客層を発見しなければならない。 自社の事情に基づいた戦略立案 顧客の要求を全て追求するには経営資源(人、物、金、情報)が足りない。 つまり、製品区分や顧客の範囲、地域の範囲が限定されてしまう(競争相手も同様) その中で如何に収益を上げて戦うかは、自社の環境を十分に把握、分析していなければ ならない。 開発力、生産力、販売力、流通力、サービス力、、何処が他社と差別化されているか? 何処を補強するか、何処に集中するか、、、 競争相手を考えた戦略立案 自社分析が完了したら、競争相手の弱いところを叩くのが簡単である。 競争相手がどのような戦略(収益構造)を実行しているかを把握して、その虚を突くのである。 当然、相手も同じ事を考えるので、如何に早い情報と先見性と行動力が勝負となる。 正面からの競争は単なる消耗戦と言って、経営資源が大きい方が勝つのは道理であるが 勝ったとしても、市場を乱し、資源も失うのは見えている。 全体としての戦略立案 個々の製品戦略について考察できるようになれば、今度は企業全体となる。 総合メーカーに強みがあるのは、幅広い市場と顧客と製品群を持ち経営資源が豊かで あることで、現在の社会、環境変化に対して柔軟に対応できるからである。 しかし、事業部化された組織にセクショナリズムが生まれ、それらを中央が戦略管理 できなくなった場合は、そのかぎりではない。 分散化された組織に於いては、少ない経営資源で如何に効率的に対応するかが問題になるが、各事業部が組織化され集中化された時は見かけ上の少ない資源で最大限の力を発揮する。 いずれにしても、重要なのは「人材」戦略である。優良な企業も数名の戦略家と技術者を引っこ抜けば「金、物」の資源があっても烏合の衆となり果てる。 このことは、信長の稲葉山城攻略に於いて、斉藤側の主力3人衆を寝返らせたことで形勢が逆転したことの歴史が物語っている。 |