交渉力 |
弱者の交渉長州征伐は1864年、1866年の2度に渡って反幕勢力の 長州藩に対し行った幕府の戦いである。 戦況は幕府が不利で14代家茂の病没を機に休戦となる。以後幕府の権威は失墜してゆくのである。 1868年薩摩を打つため出兵したことで、鳥羽伏見の戦いが勃発 し、朝敵の汚名を着せられた幕府は薩摩・長州の討幕派に大敗 することになる。 江戸に向かって進軍する東征軍の総督府参謀は西郷隆盛であった。 幕府陸軍総裁は勝海舟 江戸総攻撃にて、徳川幕府の息の根を止めねば日本の改革は果たせないと する西郷との交渉を、勝海舟はなんとしてもしなければならなかった。 日本が分裂し、欧米の植民地となってしまうのを最も恐れていたからである。 交渉に当たって幕府に有利に展開するために、出来る限りの戦略構想を 用意しておく必要があった。 賊軍の汚名を着せられ、武力的にも弱い立場にある為、対等の立場に立つ為に 相手の弱みを効果的に活用しなければならない。 戦略の根本を焦土戦術とした戦略構想を綿密に計画した。 ナポレオン軍を迎え撃ったロシア軍の モスクワを焼いた歴史に学んだのである。 (モスクワを焦土化することで糧道を断たれたナポレオン軍は撤退をした) 江戸市中の仁侠の親方、火消しを訪ね爆薬を配り手配を整え、民衆の避難対策 にも腐心した。 また、イギリス公使ハリーパークスと接触し亡命工作までしていた。 さて、両者の会談は芝・薩摩屋敷で行われた。 勝海舟は前将軍の未亡人和宮の処置について口火が切った。 初日の会談はこれだけである。 明日の本番に向けての緻密な配慮が潜んでいた。 慶喜の首は欲しいが、 朝廷からご身辺の安全を守るように勅命がくだされていたのを知っていたからである。 翌日の会談では幕府の嘆願書を提出した。 その文面には、京都では慶喜の死罪を求めているのに幕府は無罪放免 どころか戦犯に対し寛典を願い、軍艦・武器を没収することなかれ と言うのである。 勝海舟は軍艦を制圧しているのは、榎本釜次郎でありよく言い聞かせるのに 猶予がほしいという理由を平然と言ってのけた。 討幕派には弱みがあった。 イギリス公使パークスは横浜の居留地に戦火が及び貿易上の損害が出るのを恐れ、 西郷に対し、「無抵抗の将軍を殺すのは万国公法上許されない、 そのような事をすれば、英仏は連合して新政府を打つであろう」 と言う通達をしていた。 また、軍費が底をつきかけていたし、関東各地の農民の一揆が 次々に起きる等難問がいくつもあったのである。 勝海舟は、この西郷の弱みをほぼ掌握していたことによる 対等交渉を行ったのである。 西郷の「もし、江戸総攻撃を開始した場合はどう処置されるか?」 の問いに対し、 海舟は、江戸焦土化には触れず、 「インド・シナの轍を踏むことになりましょう」と答えた。 背中に剣を持ちながら、日本の将来と言う双方の妥協案的利益を求める。 高等交渉術である。 これによって、江戸の町が焦土化することが回避され、 列強による日本の植民地化の危機を乗り越えることができた のである。 |
交渉とは!交渉とは、対立関係から連帯へ移るプロセスである。2つの側面があり論理的な側面と心理的な側面である。 交渉は理詰めで議論がされていくが、心理的動揺が存在する。 怒って感情に走った方が負けである。 交渉には4つの側面がある。 1)相互に共通利益がある。 これは、連帯であり簡単である 2)対立する部分があり、自分の利益が多くなるようにする この分配的交渉から相互利益交渉へと持って行く必要がある 3)ギブアンドテイク アメリカでは等価交換の原理と言う 4)満足基準の確認 日本人はこれ以上引けないと言う満足基準が曖昧である 以上を考慮して交渉しなければならない。 また、心と身体が一体で、安定させることで、恐れ、おののきを 排除しながら交渉に 望む。 交渉術は学習可能である。 新入社員より係長、課長、部長と交渉力が旨くなるが、経験に 左右されている。 交渉が苦手と思っている人でも学習可能である。 準備をするのである。 黒船のペリーが日本に開国を迫った。このときペリーは 数百冊の日本の本を読み、日本人の威厳の弱点を見抜いていたのである イスラム圏では、表では、喉元に剣を突きつけながら威厳を保ち、 裏で、平和交渉を願っている。 相手を知ることである。 つまり準備が重要な要素である。 サービス、販売の前に値段を決めておく。 相手に与えてから交渉しても無駄である。 日本経営の下手な所に、サービスがある。 物を売ってから、サービス交渉するのである、商品戦略の基本からできていない。 次に「90.10の原理」がある。 交渉過程で時間の90%が過ぎても、10%位しか決まっていないが、 最後の10%の時間で全て決まってしまう。 交渉が進まなくても慌てて譲歩してはいけない。 詰めを慎重に対処すべきであろう。 交渉には脅しがつきものだが、平常心を保つ事が重要だ。 そして、相手を立て、自分も立つと言う両者共存の交渉へと持って行く。 「絶対矛盾の自己同一」すなわち、矛盾しているが、相手の中に自分を 見いだすことである。 1)誠実 2)人を騙すな 3)こちらの本心を悟られるな 4)冷静な頭と暖かい心 5)最後の詰めは急激にくる 6)目先に捕らわれて大きな損をするな 7)成果に対する適正なコストを考慮する 8)平常心を常に保つ これらの事に注意しながら交渉力アップに貢献しよう。 「 |